1-1細いタイヤ

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細いタイヤは軽さと高圧を目指したかたち

ロードバイクのタイヤ幅が20~25mmと極端に細くなっているのは、一つには軽量化が目的です。

タイヤの構成素材はゴムと繊維(ナイロンやコットンなど)で、素材自体の品質によってさほど比重は変わりません。したがって使う素材の量が少なくなればそのぶん軽いタイヤができます。タイヤが軽くなることは走行した時の軽快さに大きな影響があります。車輪の外周部が軽くなると、他の部分を軽量化した時に比べるといっそう明らかに漕ぎ出し時や登坂時の軽快感が向上するのです。

もう一つの目的はタイヤを高圧で使用することです。空気入りのタイヤは1888年にアイルランド人であるJ・B・ダンロップによって実用化されました(発明者としてはこれにさきだつ1845年にスコットランド人ロバート・ウィリアム・トムソンが特許申請を行っているとされているようです)。最初の空気入りタイヤはダンロップの息子の自転車のために開発されました。

当時の道路はあまり舗装されておらず、ひどいでこぼこの上を自転車が走っていました。しかもその自転車のタイヤは金属や木材の車輪の外側にムクのゴムを張り付けただけの構造だったのです(ソリッドタイヤ)。新たに発明された空気入りタイヤは路面からの衝撃をやわらげ吸収することで乗り心地を改善しました。それとともに路面からの突き上げで車体全体が上下動することで生じるエネルギーロスを削減して軽快な走行感を実現しました。このころの自転車タイヤは写真でみたところ40~50mmほどの幅があったようです。

ところがしだいに舗装が改善し、路面がスム-ズになってくると乗り手たちはタイヤ内圧の違いが走りの軽快感を左右することに気付いたのでしょう。路面がスムーズになりタイヤによるショック吸収が以前ほど重要でなくなった状況ではタイヤ内圧が高いほうが軽快に走れることがわかってきたのです。これが「車輪の転がり抵抗の軽減」といわれる効果です。こうして「タイヤが高圧=転がり抵抗が少ない」という関係がわかってくるとタイヤをより高圧にする方法がいろいろ模索されました。そのなかでタイヤを細く作ると内圧を上げても破裂や変形といった問題が生じにくいということがわかってきたのです。

もっとも高圧化を追って果てしなくタイヤを細くしていこうとすれば今度はショック吸収性能があまりにも低くなりすぎますし、接地面積が小さすぎてスリップしやすくなるというような別の問題が発生してきます。現在のロードバイクのタイヤ幅である20~25mmという数値はこのような法則や材料強度、必要な性能条件、路面のコンディションなどといった現実の条件の組み合わせから歴史的に編み出されてきたバランスの成果なのです。

このようにロードバイク特有の細いタイヤは「軽さ」「高圧」の二つの機材特性を推進することを目指して発達しました。そしてこれらの二つの特性はいずれも「走りを軽快にすること、より速く走ること」を目的としているのです。

(続く)


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