1-6ロードバイク購入前にはここに注意!~道具としてのロードバイクの向き不向き

(承前)(この章をはじめから読む)

当店ハイロードではロードバイクにはじめて乗りたいというひとには以下のようなポイントを確認しています。もしも不安に感じる項目があったらバイクショップで相談したり、できれば試乗させてもらったりして自分にとって「期待外れ」にならないことを確認したうえで購入の検討を進めるとよいでしょう。

  1. タイヤの細さ
  2. ドロップハンドル
  3. 繊細な車体
  4. 荷物が積めない
  5. 服の汚れ

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ポイント1 タイヤの細さ

最初のチェックポイントは「タイヤの細さ」です。ロードバイクのタイヤは非常に細いので、それでパンクしないために内圧を相当高めにたもって乗る必要があります。一般的には6~8気圧で、これはミニサイクルの2~3倍です。こういう高圧のタイヤは乗り心地がごつごつしてしまいミニサイクルのようなソフトな快適さはありません。また細くて硬いタイヤは荒れた路面になるとバランスを崩しやすく危なっかしい面があります。

さらにこの高い内圧のせいなのでしょうか、ロードバイクのタイヤは空気が抜けやすくて、2~3日で1気圧ほど内圧が下がってしまうこともあります。そこできちんと性能を維持してロードバイクに乗るためには、ほぼ毎回乗車前に(毎日乗る人であれば1日おき程度の頻度で)空気圧計つきのポンプを使って内圧を補い確認してやる必要があります。これはミニサイクルとはまったくことなるわずらわしさだといえるでしょう。このようなタイヤの細さに由来する制約をきちんと意識したうえで、それでもロードバイクに乗ってみたいという人が“第一関門突破”になります。

ポイント2 ドロップハンドル

二番目のチェックポイントは「ドロップハンドル」です。ドロップハンドルのメリットのところで書きましたが、ドロップハンドルを使いこなすということは、ハンドル上の幅広い範囲を握り分ける、自分で判断して使いこなすということです。これは選択の自由があると同時にその“責任“も自分にかかってくる、つまりちゃんと使いこなさないとむしろ走りにくいかもしれない、ということを意味します。

このことを筆者はよく「自動車のシフト機構にオートマチックとマニュアルとがあるようなもの」と説明しています。ミニサイクルやクロスバイクなどの自転車では握る場所が一か所決まっています。その場所さえ握っていれば安定して走ったりブレーキを掛けたりという走行上必要な操作が一通りできてしまうのでそれ以上考えたり工夫したりする必要がありません。これは自動車のシフト機構にたとえるとオートマチックにあたります。これに対してドロップハンドルの場合は、そのとき自分がどういう走り方をしたいのかを意識してそれに応じた握り位置を自ら選ぶ必要があります。そのかわりに、この握り分けによって乗車姿勢を最適化し、より思い通りに走ることができます。これが自動車のマニュアルシフトとよく似ているのです。今日マニュアルシフトはレース用や趣味の自動車以外ではほとんど見かけなくなりました。それは日常の場面ではいちいち判断や操作がいらないオートマチックが道具として便利だからでしょう。しかしカーレースの場面では車やドライバーの能力を極限まで引き出す必要があるので少しの無駄も許されません。一瞬一瞬のドライバーの判断でギヤ比を最適に調整できるマニュアルシフトがそこではいまだに必要とされているのです。

ドロップハンドルを使いこなすというのは、カーレースでのシフティングと同じような高度な判断と操作とを、ハンドルの握り分けによって行うということなのです。そこで“そんな細かな操作や配慮をするのはわずらわしい、もっと気軽に走りたい”という人にはドロップハンドルは機能のうえでは無駄な装備、ファッションだけの存在ということになるでしょう。握りにくいのでむしろ敬遠すべきという場合もあるかもしれません。そういう場合にはクロスバイクのように握り場所を考える必要のないタイプの自転車がむしろお勧めということになります。いっぽうで自分の力の限界まで走りたい、できる限り無駄をなくしてラクに走りたいという人にとっては、ドロップハンドルは大変頼もしい道具となるでしょう。

ドロップハンドルについてもう一つチェックしなければならないのが、体格や手の大きさとの関係です。まずハンドル自体の形状として体格の小さな女性やジュニアのライダーにふさわしいサイズのハンドルがほとんどありません。小柄な人が大きな人と同じ形状のハンドルを使おうとすると、ブラケットをきちんと握れるようにハンドルをセットすると下ハンドルが低く遠くなりすぎて使いこなせないということがよくおこります。筆者のショップではハンドルを加工して対処することもありますが、こうした加工は公式レースに参加する場合は禁止されていますし(UCI規則1.3.002)、体格に応じたすぐれた形状のハンドルの開発をメーカーには期待します。

つぎに、ブラケット部分が太いことや形状があわないことが原因でそもそもブラケットがしっかり握れないとか、ブラケットを握っているときにブレーキや変速の操作が円滑にできないという例もよく見られます。これらは手の小さい人や手の弱い人に見られます。とっさの時にこそ必要になるブレーキ操作にストレスを伴うわけですからこれは深刻です。これについてはぜひともメーカーに真剣な開発をお願いしたいと思っています。女性やジュニアがきちんと楽しめる環境のない趣味スポーツがはたして発展するでしょうか。今後のメーカーに適切なマーケティング能力があることを願うばかりです。

以上のような事情を背景として具体的に当店では、

  • 「普段握るところはブラケットです」
  • 「上ハンドルだけ握っているとブレーキレバーから手が遠くなり危険だしバランスがとりにくくなります」
  • 「下り坂では下ハンドルをしっかり握って確実にブレーキを掛けましょう」

という3点を指摘しながら入門志願者に実際にドロップハンドルを握ってもらってチェックを行っています。またバイクフィッティングの過程では、必要なバイクのサイズが数値として確認できるのでその段階でハンドル改造などのテクニックを含んでバイクの組み立て形状を決定しています。
このようにとくに小柄な人の場合だとドロップハンドルを使いこなせるかどうかの判断を入門者がすべて自分だけでおこなうのは難しいですから、ここは専門家(ショップのスタッフ)の知恵を借りたほうがいいでしょう。これらをチェックできれば“第二関門突破”です。

ポイント3 繊細な車体

チェックポイントその3は「車体の繊細さ」です。ロードバイクは軽くきゃしゃにできているので倒したりぶつけたりといった衝撃に弱く、取りあつかいには注意が必要です。とりわけカーボンファイバー製の軽くて高級なモデルはデリケートで、駐車場で軽く倒してしまったところ当たりどころが悪くて車体に亀裂が入ってしまったなどというかわいそうな話もあります。さいわいごく最近ですがカーボン製の自転車にたとえ亀裂や破断が生じても専門業者のもとで修理ができるようになってきました。しかしこうした特殊な修理はかなりの出費になりますし、そうした気遣い自体が煩わしいのですこし頑丈で廉価なバイクを選んだほうがむしろ目的にあっているという場合もあります。

また、ロードバイクの高性能は車輪やギヤの回転部分、変速装置のメカやケーブルといった機構部分の確実な整備によって支えられています。ですからおおざっぱにいって年に一度程度はショップでバイク全体の点検と消耗品の交換を行うことが望ましいでしょう。このように取扱いに一定の手間や注意を惜しまないこと、これが“第三関門”です。

ポイント4 荷物が積めない

チェックポイントその4は「荷物が載せられない」という点です。自転車遊びに対してどのようなイメージを抱いているかは人によって千差万別です。荷物を自転車にたくさん積んでゆったり旅をしたいというようなイメージの人にとってロードバイクは不向きな道具です。車体がきゃしゃすぎて荷物の荷重に耐えられないのです。
「乗せる荷物よりもさらに重い乗り手の体重に耐えられるのだからそんなことはないだろう」と思われる方もいると思いますが、荷物と体重とではこの場合すこし事情が違います。体重に関しては乗り手が「路面からくる衝撃を自分の体に受けたくない」という思いから自発的にやわらかく動いて衝撃を体で吸収しています。そのため自転車に跳ね返るエネルギーもカドが取れて最大値が小さくなっています。これに反して車体に積載した荷物についてはこうした衝撃吸収が働かないため、荷物に伝わる衝撃はそのまま自転車にも跳ね返ってきます。そこでそうした鋭い衝撃の連続に耐えられずにロードバイクのフレームが破断してしまうのです。

ロードバイクで荷物を運ぶ場合、車体に取り付け可能なごく小さなバッグ類(サドルバッグなど)を除いては乗り手が背負って運ぶ必要があります。しかし重い荷物を背負うのは乗り手の動きを妨げますし、荷物の重さでお尻や腰が痛くなる場合もあり注意が必要です。要するに“ロードバイクは荷物を運ぶのに適した道具ではない”のです。

ポイント5 服の汚れ

チェックポイントその5は「服の汚れ」です。ロードバイクには泥除けやチェーンガードがついていませんので、路面からの泥はねが服に付いたり、チェーンの油でズボンの裾が汚れたりしやすくなっています。しかも車体寸法上の制約があるのであとからこういった汚れを防ぐ付属装備をつけることもほとんどの場合難しいものです。もしもこういった装備がほしいと思うような場合にはロードバイクは最適な道具とはいえないでしょう。


いかがでしたでしょうか。ロードバイク入門を考えている皆さん、ロードバイクを友人に勧めようと考えている皆さん、ご参考になりましたか。当ブログ連載・ロードバイクの【基礎】、第一章はこの記事で終わりです(第二章に続きます)。

ご自分のイメージしている自転車遊びのスタイルに合った道具=自転車をうまく見つけてくださいね!

(この章をはじめから読む)

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