2-3)はじめてのロードバイク購入で失敗しない“守りの発想”

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だいたいの予算がわかりましたので、店頭やカタログ、ネット上にあるバイクの中からだいぶ候補を絞れました。しかし候補はまだまだあります。店員さんに聞いてもカタログを読んでもそれぞれに魅力的な解説がついていて、そもそもどこを見て判断したらいいのかそこからお手上げになってしまう人も多いでしょう。百花繚乱の入門ロードバイクのなかから自分に最適の一台を見つけるにはいったいどうやって比較すればいいでしょうか。

専門店の選定眼を利用する

まず機能面、バイクの品質の観点からみてみましょう。この面でいうと第一に“あるていど名の通ったメーカーの製品を選ぶべき”と思います。自転車は比較的製造が容易な工業製品ですので、残念ながらいいかげんな製品も世間には存在します。

車両設計や品質についての根本的な問題を避けるには、ロードバイクの販売や整備をきちんと行っている専門店で品定めすることです。専門店は自己の信用がかかっていますので品揃えには責任があります。なるほど通販などでは安い価格でバイクを入手する機会もあります。しかし対面販売でロードバイクを購入するのはこうした“みえない信用”に投資することでもありますから、自分で品質の判断ができない入門者にとってはとりわけ有効な投資といえると思います。

対面販売でロードバイクを購入するのは“みえない信用”への投資

自転車のブランドについてみるとき注意してもらいたいポイントの一つが“シマノ製自転車“という表記です。(株)シマノは有名な自転車部品メーカーで、東証および大証一部上場の優良企業です。しかしあくまで“部品メーカー”であって、自転車全体を製造したり販売したりはしていません。“シマノの自転車”というものは本当は存在しないのです。“シマノ製自転車”という表記は、シマノ社の部品を一部組み込んで無名の自転車を製造販売しようとするときに使われる常套句です。

カタログを読む 1~車体重量

第二のポイントは「参考重量表示にこだわりすぎない」ということです。ロードバイクの品定めをするとき、ショップの店頭で実際の車両に触れて品定めすることはもちろんですが、インターネットでメーカーサイトを見ることもできますし、ショップ店頭で手に入れたメーカーカタログや、あるいは専門雑誌の記事などから情報を集めることもできます。幅広い候補のなかから好みの一台を納得して選ぶためには、このような情報集めはある程度まではいとわずに行ったほうがよいです。

こうした情報収集の場面で資料から読み取ることのできる性能諸元、一般に「スペック」といわれているデータは多岐にわたりますが、このうち初心者にとってもっともわかりやすいのがこの「車体参考重量」という項目です。一般的にロードバイクは軽いほど軽快に、ラクに走ることができますから軽さはとても重要な性能項目です。しかしここには注意すべき点があります。メーカーによって「参考重量」を表示する基準がまちまちなのでメーカー発表データを表面的に並べてみても同一基準で比較することにならないのです。

よくあるのが、あるモデルについて存在する各サイズのうちもっとも軽量になる一番小さいサイズについての重量を表示するパターンです。“この軽さだといっても嘘にはならないよね”という最低限の誠意による表示といえるでしょう。複数のサンプルを計測してもっとも軽かったものの重量を表示する、というのも同類です。「カタログ上軽量であると表示できるほど製品が魅力的に見え商売上うまみがある」という事情があるためにこのような表示が横行するわけです。しかしこのような場合あるライダーが自分にあったサイズのバイクを実際に手に入れたとき、メーカー表示の参考重量より重たいバイクになっていることがむしろ多いという残念なことになります。

この対極にあるのがブリヂストンアンカーの重量表示ポリシーです。ブリヂストンでは「工業製品である限り重量のばらつきは避けられない、そこで当社ではありうる範囲でもっとも重くなった場合の重量を参考重量として表示し、併せて計測サイズを明示する」という基準を採用しています。これは「実際に当社のバイクを買ってくれたお客さんをあとからがっかりさせない」というたいへん誠実な姿勢だといえるでしょう。しかし商売上有利とはいえないためこのような表示を徹底するメーカーは多くありません。

このような混乱を背景にして一部のメーカーはそもそも参考重量の表示をしていません。これには「不誠実な表示をする他社と同じ土俵で比べられたくない」という、ある意味もっともな事情があるでしょう。反対に各サイズについておのおの参考重量を表示するというやり方で自社の重量表示に対する姿勢を訴求するブランドもあります。

このように各社の表示ポリシーがまちまちである以上、表面的に数値を比較することは意味のある方法とはいえません。では「参考重量」はまったく無意味な情報なのでしょうか。筆者はそうともいえないと思います。

ロードバイクはきわめて趣味性の高い商品で、(信頼あるブランドのものであるかぎり)どれをとっても基本性能は非常に高いレベルにあります。そのうえで各社がしのぎを削っているのが“このバイクはどういう走り方に向いているのか”という特徴づけ、“味つけ”の部分です。そこでカタログ上で参考重量の軽さを強く訴求しているバイクの場合、カタログの読み手としては“ああ、このバイクは軽快な走りを身上としているのだな”という判断ができるわけです。ただこの場合、一般的には別の角度から性能的に劣る部分が生じやすいともいえます。軽量なぶんだけ取り扱いに繊細さを要求されたり、耐用年数が短くなったり、体重のあるライダーにとってはたわみが大きく不安定な乗車感覚になる、などが考えられます。いっぽう単純に“軽さ”のみを訴求しないバイクもあります。そうしたバイクはきっと“高負荷での反応性の良さ”、“耐久性”、“しなやかな乗り心地”といった別の要素を念頭に置いて製作されているに違いありません。

要するに参考重量表示は“メーカーが考えるそのバイクの得意分野、味つけの意図を反映している”ということができ、そのかぎりにおいてバイク選びの際の有益な情報であるといえるでしょう。

カタログを読む 2~搭載パーツのスペックが良いとき

第三のポイントは「“お買い得”を過度に追い求めない」ということです。カタログスペックがある程度理解できるようになった初中級者によくある判断方法に、同価格帯のバイク同士を比べて“このバイクは価格の割にすぐれたパーツが装備されているからお買い得”というものがあります。

たしかにロードバイクの構成パーツにはすぐれたものとそうでもないものが存在し、高性能なものほど価格が高いのが通常です。ですから車体全体が同じ価格なのに一方のバイクにはより高級なパーツがついていたらそちらがお買い得と考えるのは自然です。しかし同じ業界で継続して競争している自転車メーカー各社の間で、製品原価についてそうそう大きな違いがあるはずはありません。ある部分に贅沢な部品がついていたら、ほかの部分でコスト削減が厳しく行われている可能性があるとみるべきです。

ロードバイクの構成要素は先にみたように、「フレームセット」、「ホイールセット」、「グループセット・コンポーネント」、「サドルやハンドルなど、その他のパーツ」の四つに分けられます。そのうちでたとえば“ホイールセットに格上のものが用意されている”としたらそのぶん“その他のパーツが格下のものに抑えられている”とか、“フレームセットの品質が抑えられている”などの隠れた相殺事情がきっとあるでしょう。

初心者が単独でこうしたバランスを読み解くのは難しいですが、少なくとも一部分に突出した高性能部分があるとされるバイクは、別の部分で品質的にやや抑えられている可能性があるということを念頭に、“お買い得感”だけを追及する発想は避けたほうが無難です。車体構成全体のバランスがよいものが結局全体としてよいバイクなのです。

「守りの発想」まとめ

  • 下調べをしよう
  • ショップで相談しよう
  • バランスを大切に「車体全体のバランスがよいものが結局全体としてよいバイク」

(続く)

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