3-2) ブレーキ操作

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左右のレバーの使い分け

ロードバイクのブレーキは前後の車輪それぞれについているので二系統あります。日本とイギリスではふつう右レバーで前輪ブレーキを、左レバーで後輪ブレーキをコントロールするよう設定されています。アメリカや多くのヨーロッパ諸国では逆に左レバーが前輪ブレーキにつながっているので、もしも外国人の友達のバイクに乗るときは要注意です。

前後のブレーキの使い分けと、その理由

ブレーキをかける時は前後両方のブレーキを使うのが原則で、これがもっとも早く確実に減速できます。しかし前後のブレーキはその性質上性能が異なり、いわば“一長一短”の関係にあります。そこで前後各ブレーキの長所と短所を理解して使い分けることが安全・安心な走行には欠かせません。

1-自転車のブレーキは前側のほうがよく効きます。レバーからブレーキ本体までが近く力を伝える部材が少ないのでたわみによる力のロスが少ないこと、減速時には車体が前につんのめるようになるため(=モーメントが生じる)前輪が地面に押し付けられ、接地部分の面圧が上がることで摩擦力が増え大きな制動力を地面に伝えることができること、この二つが理由です。

反対に後ブレーキではブレーキワイヤなど力を伝える部材が長いのでたわみが大きくなりレバー操作の手ごたえがややソフトで力のロスを感じますし、しかも制動を始めると車体が前につんのめることで後輪への荷重が抜けてしまい、少しのブレーキングでもタイヤが滑りやすいのです。

2-前側ブレーキは効きすぎてしまったときに危険です。前側ブレーキは強力なだけにうっかりすると車輪の回転を完全に止めてしまう可能性があります。これを“ホイールが(ブレーキが)ロックする”といいます。ブレーキがロックしてしまい、かつ地面と車輪のあいだにも滑りがなかった場合、自転車は乗り手と一緒に前転して転びます。いわゆる“ジャックナイフ”というもので、もちろん大変危険な転び方です。ブレーキがロックしてしまい、かつ地面と車輪のあいだに滑りが生じた場合、自転車は足払いをかけられたごとく真下につぶれるように転倒します。このばあい乗り手のテクニックで車体をコントロールする余地はほとんどありません。前輪を滑らせるとたいへん危険なのです。

いっぽう後ブレーキではロックさせてしまったとしても“ジャックナイフ”転倒の恐れはないうえ、操舵を担う前輪のグリップが残っているのでロックして滑ってしまっている後輪を引きずるようにしつつバランスを取り続けることができ、はるかに安全です。子供の自転車遊びのなかにこうして後輪をわざと滑らせて楽しむ様子を見ることもあります。

これらの事情から、前ブレーキをおもに使ったほうがいいのは、

  • 見通しの良い急な下り坂など、強いブレーキ力が必要だがとっさの対応が必要になることのない状況。

といえます。いっぽう後ブレーキをおもに使ったほうがいいのは、

  • とっさの場合。うっかり利かせすぎたばあいにも前ブレーキよりはるかに安全です。

といえるでしょう。

カーブ中の前ブレーキは“ご法度”!

またカーブしながら前ブレーキをかけることもご法度です。自転車のタイヤが摩擦によって地面に伝えることのできる力には接地面積と面圧に応じた一定の上限があり、この限界を超えるとタイヤは滑り始めます。いっぽうカーブしているとき、自転車の前輪は地面を横へ横へと押す力を伝えていますが(サイドフォース)、急カーブのばあい前輪のタイヤは摩擦力の大部分をサイドフォースを生み出すことに費やしています。そこにさらに前ブレーキをかけるとブレーキのために要求される力の伝達量が加算されることでタイヤの摩擦力の限界量を超えてしまい前輪がスリップしてしまうおそれがあるのです。

そこでたとえば急な下り坂でコーナーリング中に自然に加速してしまい、コーナーの途中で追加のブレーキが必要になってしまったというような場合、かならず後ブレーキを使うようにしてください。後輪でしたらたとえコーナー中にスリップさせても乗り手の技術で転ばずに姿勢を立て直す余地もありますし、運悪く転ぶとしても衝撃の少ない体勢で“より安全に”転んだりする工夫ができます。

(さらに「多角形コーナーリング」というテクニックもあります)

まとめ:前ブレーキはよく効くのでしっかり使えるようになろう。だがとっさのときやカーブの途中などでは使わないように要注意


(続く)

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