3-4) 普段使うギヤはどれ?~変速機のほんとうの役割

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ロードバイク入門者から「普段はどのギヤで走るのですか?クルマと同じでトップギヤですか」と聞かれることがあります。ロードバイクでは“普段使うギヤ”というのはとくに決まっていません。個々の乗り手がそのときどきに走りやすいと思うギヤを自分で選んで使います。

ロードバイクのギヤ比を調整する機構を“変速”機構と呼ぶためか、“走る速度に合わせて”ギヤを操作するものと思っている人も多いですが、これは誤解です。機械装置である「変速機構」において“変速”というのは、機構への入力段階(ロードバイクではペダルクランク)の回転速度が機構の中で調整され、出力段階(ロードバイクでは後輪)の回転速度が変わることを指します。つまり“入力速度に対する出力速度の変化”を指して“変速”といっているのであって、このことは走る速度と直接の関係にはありません。

どういうギヤが自分にとって乗りやすいかというのは二つの目安で判断します。一つはペダルの一踏み一踏みの重さ(踏み応え)です。あまりに重いペダルでは脚の筋肉が疲れますし、逆に踏み応えがほとんどないくらいにペダルが軽いと空回りするような感じでかえって疲れます。それにペダルが軽いと今度はサドルに体重がかかりすぎになってお尻が痛くなることもあります(後述予定)。

もう一つのポイントはペダルクランクの回転速度(クランクのケイデンス)です。ギヤが軽くてケイデンスが高くなりすぎると脚がついていけなくなったり、むしろよけいに疲れてしまったりします。逆にケイデンスがあまりに低いのも漕ぎにくいものです。このようにペダルの重さにもケイデンスにも“ちょうどいいあんばい”というのがあります。

またこの二つの指標はおたがいに関連しています。一定のスピードで走る(=一定の力でペダルを漕ぐ)として、かりにケイデンスを2倍にあげることができれば一踏みごとのペダルの重さは半分で足りる、つまり反比例の関係にあります。たとえば登り坂にかかってペダルの重さが重くなりすぎたらギヤを軽くすればペダルの重さを軽くすることができます。ただしもしもそれまでと同じ速度を維持したいと思ったなら余計に速くペダルを漕がないといけないことになるのです。

では登り坂でギヤを軽くしたのでペダルの重さはちょうど良くなったが、ペダルをそんなに速く回すことができなかったら?そのときは走るスピードが下がるだけです。平坦でのスピードのまま坂を駆け上がろうとしたことがそもそも無理だったのであって、遅くなってしまった現在のスピードがその人にとってちょうどよいスピード、ちょうどいい“がんばりぐあい”ということになります。

さらに、同一の出力を維持するためのケイデンスとペダルの重さとの組み合わせの”ちょうどいいあんばい”には個人差があります。クルクルと軽くクランクを回して出力を維持するのが得意な人もいれば、重いギヤをじっくりと踏みしめて走るのが得意な人もいるのです。状況に応じていろいろなギヤを試して、その場面場面で自分にとってラクなギヤ選択を身につけるように心がけるのが最善です。

このように変速操作をする場面ではペダルの重さ、ケイデンス、そして走るスピード(乗り手のがんばりぐあい=出力)、この三つを考慮に入れて自分が“いいあんばい”で走れるバランスを見つけましょう。これは他人に教えてもらうことができない自分だけの走る技術といえます。(なお、この“いいあんばい”を見つけるのに使える道具として「心拍計」と「パワーメーター」というものがあります。)

1)ペダルの重さとケイデンスとは反比例の関係にあるが、同一の出力をだすときのペダルの重さとケイデンスとの組み合わせについての”ちょうどいいあんばい”には個人差がある。

2)どのぐらいの出力が自分にとって最適かは、(もちろん)個人差がある。

がんばりぐあいとペダルの踏み応えとについては個人差が大きいので省きますが、ケイデンスについてはある程度“いいあんばい”の目安があります。ロードバイクでサイクリングするとして、平坦な道でゆったり走っている場面では1分間に75~90回転(75~90rpmといいます)、ややがんばっている場面では1分間に85~100回転(85~100rpm)くらいが初級~中級者にはちょうどよいでしょう。まったくの初心者の場合、ケイデンスが少し低すぎる例が多いように思います。

これ以上ケイデンスが低いとペダルが重くなりすぎて脚の筋肉やひざ関節に負担がかかるおそれがあります。いっぽうこれ以上にケイデンスを上げるにはペダルをきれいに漕ぐ技術が必要です。きれいに漕げないのに無理にケイデンスをあげても動きに無駄が多く疲れるだけです。しかも汚いペダリングのままガムシャラに漕ぎ続けるのはそのような汚い動きの癖を自分の体に刷り込むこと、つまり“下手な動きの反復練習”になってしまいます。ぜひ“よりよい動き”を意識して無駄のないペダリングを目指しましょう。

無理をせず、“下手な動きの反復練習”は避けよう

ギヤの使い方という冒頭の観点からいうと、要するに自分が“いいあんばい”で走れればそれでよいのです。ぜひいろいろなギヤの使い方、いろいろな“がんばりぐあい”(出力)を試してみて、自分だけの“いいあんばい”を探してみてください。


(続く)

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