ハンドル周りの調整いろいろ

【この記事のポイント】

(握り心地)ハンドル上のブラケット位置はかなり幅広く調整でき、これによって握り心地が大きく変えられる

(握り位置=ポジション)ブラケット位置とハンドル取付角度の調整で握り位置(=ポジション)が大きく変わり、ハンドルステムの交換に匹敵する効果がある

(長いです。じっくりお読みください)

ロードバイクには乗り手に合わせて調整できる部分がいくつもありますが、ハンドル周辺にも調整できる部分がたくさんあります。一般的にはステム交換による握り位置調整が知られていますが、じつはこれに勝るともおとらない効果的な調整個所があります。それがここで紹介する「ブラケット位置とハンドル取付角度の調整」です。

【目次】

  • 調整できる箇所
  • “標準的”なセッティング例
  • 組み合わせ調整例1 ブラケット上面からハンドル肩にかけての“うえから握れる面”の前後長さ調整
  • 組み合わせ調整例2 ハンドルクランプ中心~ブラケット上の握り位置への水平距離・垂直距離の調整【計測図版多数】
  • ハンドルを「送る/しゃくる」という用語について
  • 調整の手順
  • いろいろなハンドル形状【図版】
  • 【!】組み合わせ調整の注意点
  • まとめ

調整できる箇所

その1 ハンドル取付角度

下写真のようにいろいろな取付角度が取れます。ハンドルメーカーの一般的な設定では、「“ハンドル先端の直線部分”の角度を基準として、前上がり角度が0~5度くらい」になるのが適正範囲です(写真2番と3番)。写真では直線部分に合わせて定規を取り付けて角度を見やすいようにしています。

その2 ハンドル上のブラケット取り付け位置

こちらも下の写真のようにいろいろな位置がとれます。ハンドル及びブラケットパーツのメーカーの考える標準的なセッティングは「“ハンドル先端の直線部分”の下側延長線がブレーキレバー先端をかすめる位置」とされているようです(写真中央)。この調整はバーテープをはがさないとできないので十分計画して行ってください。

“標準的”なセッティングの例

下写真はいずれも“標準的”といえるセッティングです。

組み合わせ調整例1 ブラケット上面からハンドル肩にかけての、“うえから握れる面”の前後長さ調整

コンパクトシャロータイプなど最新のかたちのハンドルバーでは、ブラケット上面からハンドルの肩部分にわたって比較的フラットに面がつながっていて、一体として“うえから握れる面”をかたちづくっています。

ハンドル上のブラケット位置とハンドル取付角度を組み合わせて調整すると、この“握れる面”の前後長さをおよそ20mm前後もの広範囲で伸縮できます。下写真左はこの“握れる面”を最大にした場合、右はぎゃくに最小にした例です。

左写真だとハンドルとブラケットカバーの間に段差があるように見えますが、この程度であればバーテープを巻いてしまえば違和感はさほどありません。

“うえから握れる面”を長くした場合のメリット・デメリット

メリット

  • 手の大きいライダーが快適にブラケットを握れる
  • 手のサイズがふつう~小さめの場合、ブラケットを握った状態のうちでも手前気味~先端気味と握り位置を微調整できる幅・余地が生まれる
  • ブラケットが近すぎる(そしてステム交換ができない)場合、より適切な遠めのブラケット握り位置が得られる

デメリット

  • 下ハンドルの握り角度や握り位置を考慮していないので、下ハンドルが握りにくい角度や位置になってしまう場合がある
  • ブラケット先端部がハンドル基部から離れるので、ステム交換ができないときにはブラケット先端部の握り位置が遠くなりすぎる場合がある

組み合わせ調整例2 ハンドルクランプ中心~ブラケット上の握り位置への水平距離・垂直距離の調整

さきほどみた“うえから握れる面”を伸ばす、という調整は、要するに「ハンドルクランプ中心~ブラケット上の握り位置への水平距離」(下各写真のx)を延長するものでした。さらに加えてハンドル上のブラケット位置とハンドル取付角度を組み合わせて調整することで、「ハンドルクランプ中心~ブラケット上の握り位置への垂直距離」(下各写真のy)も調整することができます。

様々なパターンとその効果を図示します(x,yの単位はミリメートル)。

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(2018/07/23 上のGIFアニメを追加しました。)

1-ブラケット位置高めの場合 左からハンドル角度が前上がりになっていきます(以下同)

2-ブラケット位置標準の場合

3-ブラケット位置低めの場合

なお計測は、ハンドルクランプ中心(a)から、ブラケット上面のカーブの中で親指と人差し指の間の股部分が自然に触れる部分(b)までとしました。bの位置はブラケットの角度によって微妙に変わるのでその都度自分が“独断で”決めています。

計測の手順は、三脚にカメラを設置、できるだけハンドルから離した位置に三脚を設置したうえでカメラの望遠機能を使いできるだけ画像を拡大(こうすることでレンズの集光による画像奥行き方向への歪みを少なくできる。下写真左及び中央)、撮った写真をPC画面上でツールを使い測定しました。実寸は同条件で撮影した定規の目盛りを参照しています(下写真右)。

ハンドルを「送る/しゃくる」という用語について

ハンドル取付角度の変更動作について雑誌などで「送る」とか「しゃくる」という表現がみられますが、その意味については注意が必要です。

比較的新しい用例はこうです。

「送る」:ハンドルを下方向へ回転させ、ブラケットが乗り手からみて遠くなる変更

「しゃくる」:上の逆で、ブラケットが乗り手からみて近くなる変更

いっぽう筆者が30年ほど前に競技場(ロード及びトラック種目)で覚えた用例は上の逆で、

「送る」:ハンドルを上方向へ回転させ、下ハンドルが乗り手からみて遠くなる変更

「しゃくる」:上の逆で、下ハンドルが乗り手からみて近くなる変更

おそらく古い用例はトラック競技由来ではないかと思います。いずれも俗語なのでどちらが正しいというのはすでにないのかなと思うのですが、この表現をつかうひとがどちらの意味を担わせているのかは注意したほうがいいですね。

調整の手順

おおくの場合すでにバイクが組みあがって手元にあるはずなので、実践的には下記のような手順が合理的でしょう。

  1. ブラケットがハンドルに固定された現状で、ハンドル取付角度だけを調整して、しっくりくるブラケット角度を確認する。
  2. その状態でつぎに下ハンドルを握ってみて、ここがしっくりと握れるか確認する。OKなら完了!
  3. 下ハンドルがしっくりこない場合は、下ハンドルがしっくりくるようにハンドル取付角度を再度変更し、ついでバーテープをはがしてブラケットを移動して、1で確認した快適な角度にブラケットをセットする。
  4. ブラケット部分の握り心地を再度確認する。ブラケットからハンドル肩にかけての“うえから握れる面”の形状がはじめとは変わっているのでその点で不具合がないかチェックする。
  5. 下ハンドルとブラケット、両者の握り心地が両立しない場合は、既存のハンドルを交換せずに妥協点を探るか、形状の異なるハンドルに交換して再度両者の握り心地を両立できないか探る。ハンドル形状の変更で驚くほど握り心地に差が生まれます(形状の例については後出)。
  6. ブラケットからと下ハンドルからの双方で操作レバーを確実に扱えるか確かめる。とりわけ下ハンドルからブレーキ操作が確実に行えるかどうかが重要です。

いろいろなハンドル形状

現在使われているおもなドロップハンドルバーのかたち(ドロップ部分形状)を紹介します。

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(1) 今日もっとも一般的となった「コンパクトシャロー」型。ブラケットから下ハンドルへの持ち替えの移動距離が短く、身体の自由度が低い初心者にも向く。そのいっぽう、ブラケットも下ハンドルもまとめて低めにセッティングしたいプロ選手たちにも受け入れられている。また、ハンドル肩からブラケットカバーまで段差の少ない一体的な“握れる面”が得られることもメリット。


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(2) 1980年代以前に一般的だった「シャロー」型。ブラケット上面とハンドル肩との継ぎめにV字型の谷間ができる、下ハンドルを握ったとき掌の中に隙間ができてしまうなど今日ではややくせのあるかたちといえる。プロ選手の間に支持者がいる模様。

相似形でドロップ部分の曲率(アール)がより大きな「ディープ」型も存在し(現在もごく少数製造されている)、シャロー型は別名イタリア型、ディープ型は別名ベルギー型とも呼ばれた。


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(3) コンパクトシャローと同様に前後長(リーチ)を短く保ちながらディープ型のようにドロップ部を深く(下げて)とってある「ラウンド」型。上下の姿勢変化を大きくとれ、大柄な乗り手に向く。筆者としては下ハンドル部分をほどほどに低く据えながらブラケットを高く安楽なポジションに持っていけるので愛用中。写真の商品は廃番だがフィジークのシラノハンドルシリーズの「カメレオン」タイプが同様の形状で好評販売中。3Tの「トルノヴァ」も同様のドロップ形状(←特価在庫あります)。


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(4) ラウンドとはぎゃくのコンセプトで、前後上下の姿勢変化をできるかぎりコンパクトにまとめた特殊な形のハンドル、東京サンエス社オリジナル「ジェイ・フィット」。小柄な方、女性におすすめ。きちんと下ハンドルも使いこなせるようになります。

【!】組み合わせ調整の注意点

1-ハンドルとブラケットの相性

ハンドルのかたちとブラケットの相性によっては安全確実な固定ができない場合もあります。やや古いデザインのシャロー型ハンドルの上のほう(ハンドルの肩に近いほう)にカンパニョーロ社製エルゴパワーレバーを取り付けしようとして、形状が合わないため異常な力がかかって樹脂製のレバーブラケットが割れてしまっているのを見たことがあります(他店作業例。カンパニョーロ社のマニュアルにはハンドル形状との相性がかなり細かく記載されています)。

ブラケットの確実な固定について付記。最近のカーボン製ハンドルや樹脂製のブレーキブラケットでは取り付けボルトの締め付けだけではハンドルとブラケットのあいだが滑ってしまってうまく固定できない場合があります。樹脂のたわみや形状の相性、表面仕上げの相性が原因です。力任せに締め上げても固定できないだけでなくパーツを破損することもあります(とくに軽量なカーボンハンドルは危険です)。自分でやろうとしてうまくいかないときはプロに相談したほうが無難です。

2-シッティング時とダンシング時の両方でしっくりくるかを確認しよう

前上がりのブラケット角度はシッティング時には快適なことが多いのですが、ダンシングで大きな力を出そうとするときに手首が反りかえってしまって違和感がでることがあります。走行上の場面を想定しつつ、いろいろな姿勢で握り心地を確認してください。

3-ケーブル長さを確認しよう

握り位置の実質的な変更効果が大きいだけに、たまにケーブル長が足りなくなる時があります。バーテープを巻いてしまう前にハンドルを左右一杯まで切ってみて不具合がないか確認してみましょう。

4-ステムの再調整が必要なことも

上記組み合わせ調整をおこなうと、サドルに座って手を伸ばした時に感じるハンドルの近さ遠さ・高さ低さが驚くほど変化することがあります。ハンドル部分のかたちが決まったらハンドルステムのセッティングに再検討が必要になることがあります。

ぎゃくにハンドルの遠さや高さに不具合を感じているのにステム部分での調整ができないという場合、ハンドル部分の調整でなんとかごまかすことも可能です。ステム変更の予備調査として、予定しているセッティングに近い状態を、費用をかけずに仮に実験してみるような使い方もできます。

【まとめ】

1-下ハンドルの握りやすいハンドル角度、ブラケットを握りやすいブラケット取付角度と位置、これら二つをまず固めるとよい。必要ならハンドルの形状変更もこの段階で。ハンドルステムを使ったポジション調整はそのあとでおこなうとよい。

 

2-下ハンドルの握りやすさをまったく考慮しないでよいなら、ブラケット位置についてステムを20㎜前後伸縮するのと同じ前後移動量を、ブラケット位置とハンドル取付角度の組み合わせ調整で実現することができる。

 

3-ブラケットの上下位置についてもおなじく、ブラケット位置とハンドル取付角度の調整によって数十㎜の範囲で調整できる。

【参考記事】

ドロップハンドルの握り方(当ブログ過去記事)

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